LDTI基準の導入は、米国の保険会社、特に生命保険会社が長期契約を測定し、報告する方法に大きな変化をもたらすものである。小口申告者の期限が近づく中、RNA Analytics のアクチュアリープロダクトディレクターであるジョン・バウワーズは、これまでの導入に伴う課題とリソースについてレビューしている。

会計基準ASU2018-12、通称LDTI（Long-Duration Targeted Improvements）の実施期限が2023年1月に到来した。

米国アクチュアリー会によれば、LDTIは旧指針の一連の修正として提示されているが、実際には、米国で一般に公正妥当と認められた会計原則（GAAP）の下での保険会計にとって、少なくとも20年来で最も重要な変更である。

2018年8月に米国財務会計基準審議会（FASB）により発行されたLDTIは、特定の長期保険商品に関する新たな規制要件を定義しており、財務チームと保険数理チームのプロセスとシステムの統合を強化することを要求し、報告においてさらなる複雑さと頻度を導入している。新規則は、SEC提出会社については2023年1月1日に発効したが、SEC提出会社のうち小規模の報告会社、およびLDTIを採用するその他のすべての会社は、2025年1月1日の発効に向けて取り組んでいる。

実施上の課題

新規則の適用対象となる保険会社が直面する重要な問題のひとつに、保険負債の測定がある。LDTIは保険会社に対し、保険負債の測定に使用する前提条件を少なくとも年1回更新し、その影響を財務諸表で認識することを求めている。これは、保険契約発行時に前提条件を固定することが多かった従来の方法とは異なる。これは多くの保険会社にとって大きな課題であり、保険数理や財務報告のプロセスをより頻繁な更新に対応できるよう強化し、余分なデータを保管する必要があった。

割引率の変更も保険会社に難題を突きつけた。新ルールでは高品質の債券に連動した標準的な割引率の使用が義務付けられており、その結果、保険負債の報告価値が大きく変わる可能性があるからである。これに対処するため、保険会社は投資戦略や報告プロセスを調整する必要があった。

LDTIはまた、市場リスク給付の測定に新たな要件を導入しており、保険会社はその測定のために複雑な新しい財務モデルを含む新たな方法論を開発する必要がある。保険数理モデリングという観点からは、これが最も複雑な側面であると私は考えている。

さらに、新基準は、保険契約の性質、使用される前提条件、潜在的なリスクについて、より詳細な開示を要求しており、一部の保険会社にとっては、財務報告システムの全面的な見直しを要求している。

このような課題の多くに対処する上で、ソフトウェアの果たす役割は控えめにはできない。保険数理と会計データをつなぐ統合ソフトウェア・ソリューションの採用は、保険会社がLDTIの導入で直面する業務上の課題の多くに対処している。

IFRS第17号とLDTIの要件を対比すると、LDTIは負債CFの計算に対してより大きな要件を課しており、すべての報告期間において、すべての保険契約の当初からの予測を要求している。IFRS第17号は、その代わりに、更新された予測CFと、報告期間中の実際のCFに基づくロールフォワードのみを要求している。

したがって、LDTIのためのプラットフォームは、前提条件のシームレスな更新とリアルタイムのデータ統合を可能にし、財務諸表上の詳細が正しく、最新で、一貫性のあるものであることを保証しなければならない。前提条件の頻繁な更新には、シナリオを迅速に実行し、新しい情報に調整する機能を備えた、高度に洗練された堅牢なモデリングツールも必要である。

実施コスト

LDTIのスケジュールにおける現段階では、LDTIの実施に必要な資金と人的資本はある程度固まっている。

ご存知のように、LDTIは保険数理と同様にITプロジェクトである。KPMGが「2023年LDTI導入のベンチマーク」報告書のために行った調査によれば、約40％の保険会社がデータベースを、36％が保険数理評価システムを、21％が財務／会計システムを、それぞれ入れ替えた。

また、KPMGの調査によると、2023年の導入企業の24％が51人以上のフルタイム相当者を導入プロジェクトに専従させていたのに対し、2025年の導入企業では同レベルの社内リソースを有していたのはわずか8％で、プロジェクトに取り組むために外部リソースをより多く利用していた。

また、保険会社が外部の支援を利用した分野に関しては、各コホート間で同様の傾向が見られたが、保険数理に関する支援の必要性がトップであった。

コスト面では、KPMGの世論調査に回答したアーリーアダプターの大半は2000万ドルまでの予算を組んでおり、平均コストは2640万ドル（2025年採用企業の予算2700万ドルには遠く及ばない）と見られている。

S&Pグローバルによると、全米保険委員会連合（NAIC）の米国生命・傷害・医療保険業界分析レポートによると、2023年末時点の生命・傷害・医療保険会社は739社で、米国には世界最大の生命保険会社のうち12社がある。

規模の大小を問わず、新規則の適用範囲に入る保険会社は、この基準を実施する上で多くの課題とコストに直面している。LDTIの当初の目的が達成されるかどうかは、時間が経たなければわからない。